マッキーとキーヨの
美の国・秋田 二人旅
 落合 清
(ベイタウン・シニアクラブ)

 伊藤 正昭
(ベイタウン自治会連合会・会長)

厳寒の日本海を見てみたい
この年のはじめ、マッキーが「オアシス」でそんな話をしたことがあった。
その言葉を忘れかけた2月のある日、キーヨはJR東日本パスの発売をポスターで見かけた。土日の1日または2日間乗り放題。2日間で12000円と格安である。
早速、キーヨは3月1日、2日限定で誘いのメールを送った。
まあ、何かと忙しいマッキーのことだから行けないというだろうと思っていた。
ところがマッキーからの返信は「その土日は空いているのでいいよ」。
これで今回の二人の東北旅行が決まった。
それからのキーヨは忙しかった。勤務の合間を縫って旅行社に行きコースとスケジュールを相談した。自分ひとりではないので気は遣うがマッキーとの旅は楽しい。
秋田のみのコースと、秋田、山形、新潟のコースと2案を検討したが、結局マッキーのわがままが通り、秋田のみのコースに決定(最近キーヨはここで折れるようになった)。
問題は新幹線の座席指定が取れるかどうかだ。案の定、座席は満席だった。ところが旅行社の人も頭がいい。東京から仙台、仙台から秋田の区間に分割したら取れたのである。
これは仙台付近のお客さんのためにJR東日本が考え出した知恵のようだ。
事前の打ち合わせは電話とメールだけであっさりしたもの。あるとき電話に出たマッキーの奥さんから「よろしくおねがいします」。と言われた。
そんなこと言われるとつい肩に力が入ってしまう。
そんなこんなで出発の朝を迎えた。キーヨは約束に遅れてはと時間前からまだ暗い約束場所でいらいら。マッキーは家を出たものの天気予報の雨が気になり、傘を取りに帰ってちょっと遅刻。
それでもキーヨは気持ちよく笑顔で迎えてくれる。
3月1日朝明けやらぬ5時30分海浜幕張駅に向かった。

二人とも東北の日本海側は初めて
マッキーは山口生まれで東北地方にはあまり行っていない。山梨生まれのキーヨはマッキーよりちょっと東北地方に行った回数は多い。それでも秋田は中学校の修学旅行で十和田湖に行って以来のこと。
もう半世紀も前のことになる。
秋田というと日本海と八郎潟、白神山地、清酒、秋田美人、竿灯祭り、あきたこまち、きりたんぽ、ハタハタなどきりがない。そして最近では比内地鳥、稲庭うどんなどが有名である(これはキーヨが連想したものでマッキーはちょっと違う。歴史のことなんか感心するほどよく知っている)。

6時56分 秋田新幹線「こまち1号」
乗客を乗せて東京駅を定刻に出発
天気予報では雨模様とのことだったが仙台、盛岡あたりも天気はよかった。
盛岡駅で東北新幹線と切り離され、前6両こまち1号が秋田行きとなる。
秋田新幹線は在来線と同じ線路を走る。スピードも特急並みで時間調整の一時停車もある。車窓に目を移せばあたりの山は真っ白。平地でも雪こそ降っていないが4〜50cmぐらい積もっている。3月になったとはいえ春はまだまだ遠い。
田沢湖、角館、大曲、聞いたことのある名前の駅を通過し、東京を発ってからちょうど4時間、列車は秋田駅に着いた。

ローカル線に乗り替え終点男鹿駅へ
着くやいなやキーヨは駅の観光案内所に走った。案内所では二人の女性が応対してくれたが、秋田小町の期待が強かっただけにいささかがっかり。(ゴメンナサイ!)
でもキーヨは何時もの調子で早速効率的な男鹿半島めぐりのプランを聞き出す。バスもあるがタクシーを利用したほうがいいとのこと。一も二もなくその案に乗る。階段を下りるとタクシー案内所がありそこのおじさんから船川タクシーのタクシー料金のメニューを受け取る。
それによると一人2、500円で男鹿半島の西北端入道崎まで海岸線を走り、夕刻に男鹿温泉に着くという願ってもないコースがあり胸をなでおろした。
ちょうど昼時だったので駅近くで食堂を探した。
田舎に来たのだからと田舎らしい食堂に入った(失礼!)。ハワイではメニューが読めずどんなものが食べられるかというスリルがあったが、ここは日本語、安心してほっけの焼き魚定食を注文。焼く時間が15分ぐらいかかるという。
焼き方に手間をかけているようで二人ともウマイ!ウマイ!とご機嫌だった。
腹ごしらえのあと、人のよさそうな運転手さんとこれから約3時間のお付き合いが始まる。
昔出稼ぎで東京に行っていたとかで,訛りはあるがなんとなく柔らかなイントネーションが心地よい。運転手さんいわくJRから閑散期の客寄せのため格安コース料金の提供をお願いされたのはいいがその期間が過ぎた今もその料金で走らされているとこぼしていた。メーターで走ると倍にはなるそうだ。
一方、マッキーが夢にまで見た日本海はとても波静かでびっくりしたと同時にいささか拍子抜け。波の花が舞う厳寒の日本海の荒々しさを期待していたのに。
それでも親切な運転手さんから地元の人でなければ知らないような珍しい話を聞くことが出来た。昔地震による津波のため多くの遭難者(小学校の生徒や父兄とスイスからの観光客)が出た。そのための地元の有志が募金を集めマリア像を建てたことなどなど。
途中、渚百選の鵜ノ崎海岸、ツバキ自生北限地、ゴジラ岩(絵葉書にある日の光を浴びた勇壮なゴジラ像ではなくひっそりとたたずむゴジラの姿になんとはない哀愁を感じた)。
博多焼きで作られた巨大ななまはげ立像、戸賀温泉などいろいろ説明を聞きながら巡り、入道崎に着いた。ここには日本の灯台50選の入道崎灯台(白と黒のシマウマ模様)と北緯40度線のモニュメントがある。釣り人もいた。ほっけが釣れると言う。昼飯のほっけももしかしたらここで・・・。
しかも、この場所にはレーダーがあり、終戦後長い間、ソ連を監視するためのアメリカ兵が駐屯していたとのこと。時代が変わり今は北朝鮮監視の最前線とか。そこに立ってみると、海一つ隔てた目の先にという緊迫感を感じたのは気のせいだろうか。
(永遠の平和を願うマッキーとキーヨ)

男鹿グランドホテルに午後4時前チェックイン
男鹿温泉でもトップクラスの旅館。なかなかのホテルである。
7階の部屋からは180度日本海が望める。男鹿温泉は単純ナトリウム温泉、舐めて見るとしょっぱかった。露天風呂のすぐ下の波静かな日本海にはちょっと期待はずれ。
今日は残念ながら夕日が沈むところは見られなかったが明日は朝日が昇るのが見られればいいなー。そんなことを話しているとお食事の用意ができたとの案内。二人個室での夕食。
向かい合いでなく並んで座るのはなぜ?
秋田の名物、きりたんぽが量こそ少ないが、ちゃんと鍋で出てきた。冬の日本海の魚はどれをとってもうまい。量もたっぷりで、これでは名物の石焼料理を頼んでも食べ切れなかっただろう(負け惜しみかキーヨに対する気遣いか?)
何より地酒の冷酒も美味。良い気持ちになった。
しかし、マッキーの心残りはこの地の名物「石焼料理」を食べられなかったことだろう。
そう顔に書いてあった。
キーヨも同じだというがそれほどこだわりがない様子。
部屋に帰る途中のエレベータで会ったおじさん、「石焼料理」を注文したが、小さめの丼にチョコッと魚が入って2千いくらは高いとぶつぶつ言っていた。
部屋に戻りTVを見ていたがマッキーは日ごろの疲れがたまっていたのか9時前だというのにグーグー高いびき。秋田美人の膝枕の夢でも見ているのだろうか。
キーヨは温泉が大好き。一泊二日の旅行だと必ず3、4回は入る。
一人だけで本日2回目のお風呂。ああいい気持ち。
明日は朝日が見られるかな。隣ではマッキーがスヤスヤ。
つづく
2003/03/25

「マッキーとキーヨの美の国・秋田 二人旅」は、ベイタウン・シニアクラブ発行の「オアシス」紙に連載されております。

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